アキバのつぶやき
2025.04.18
達人
関税交渉でアメリカに行っている大臣に対して、トランプ大統領が前面に出てきて、関税ではない日米安保問題を出してきました。これは、交渉学で言われている統合型交渉といわれている手法です。
一方で、日本の関税を何パーセントする、いやそれは高すぎるという、一つの項目について交渉するのを配分型交渉といいます。このある一つの条件にだけ着目しますと、「奪い合い」や「度胸だまし」、「恫喝」といった形で交渉が進み、結果として交渉決裂の危険が高まります。
配分型交渉の問題点で、感情的なしこりを将来に残し、その後お互いのメリットがあるような交渉の機会が訪れたとしても、しこりが原因で交渉のテーブルに着くことができないという事態を招きやすくなります。
その危険を避けるためには、二つ以上の取引材料について同時並行に話し合う、統合型交渉が有効です。トランプ大統領とは、様々なディールによって交渉には長けているのは必定です。としますと、彼は関税問題よりも、日米安保問題を重視しているのではないでしょうか。お互いの交渉事の重みを違わせることで、取引が成立しやすくなります。
単純にすべての交渉を統合型にすれば、丸く収まるというものではないでしょう。「それとこれは、別問題だ!」「同じテーブルで議論するのはおかしい」と相手も主張してくることもあります。最終的にはお互いの利害調整で合意に至るのでしょう。結局のところ、落としどころを明確に持って交渉の場につくことが、交渉の達人というのでしょう。
彼は交渉力があるとか、説得力があると聞くと、駆け引きが上手いというニュアンスを抱くのですが、本来の交渉学とは、お互いの利害調整を実現する為の思考力とコミュニケーション力が融合したものではないかと思います。お互いの利害の調整役としての、交渉の達人になれるように日々研鑽していきたいものです。