アキバのつぶやき

2025.10.17

不動産屋から、不動産家に、「地域と人をつなぐ」

 営業という仕事を長くやっていますと、「売るという行為」に慣れてしまうきらいがあります。数字を追い、契約を積み上げ、月末の報告でホッとするそそれが大方の営業の仕事のリズムになります。けれども、あるとき気づくことがございます。
それは、「売れた先に、何が残るのか?」というふとした疑問です。

 
 不動産屋の仕事は、どうしても取引の瞬間で完結しがちです。しかし本当の仕事は、その先にあるのです。契約書を交わしたあと、その場所でどんな暮らしが始まり、どんな未来が生まれるのか。また、思いである相続した実家を、買主さんは今後どのように活用するのか。マイホームを建てるのだろうか?それなら、どんな家を建てて、どんな家庭が築かれていくのだろうか。

 
 そこまで想像できてこそ、不動産の本当の価値を扱っているといえると思います。
つまり、不動産屋から不動産家へ!この変化は「肩書き」ではなく、「構え」の違いです。

 不動産家とは、モノではなく「人」を扱う営業マンのことだと思います。土地の形や建物のスペックより、その場所で人がどう生きるかを考える。 それができる営業マンは、もはや取引のただの仲介者ではない。大袈裟ですが暮らしの編集者であり、地域の語り部にもなります。
 
 ネット社会では、不動産の情報は、どこにでもございます。価格も比較されます。だからこそ、差が出るのは“考え方”です。自分が何を信じて、どんな世界をつくりたいのか。その軸がある人だけが、顧客と長く信頼関係を築けるのではないでしょうか。

 従来からある不動産屋が「売る力」で勝負するなら、不動産家は「つなぐ力」で勝負する。短期の成果よりも、長期の関係を積み上げる。営業マンとしての技術は同じでも、目的が変われば、日々の仕事の意味がまるで違って見えてきます。
 数字を追うことと、人をつなぐこと。その両立こそ、これからの不動産営業の本当の競争優位になるのです。

2025.10.16

気分がパフォーマンスをあげる!

 朝、出勤前のカフェで、薫り高い珈琲の匂いを嗅ぎながら、お気に入りの音楽を聴く。それだけで、今日の商談がうまくいきそうな気がする。そんな「なんとなくの気分」が、実は仕事の成果を左右していることがあると思います。

 ビジネスの世界では、「成果=努力×スキル」と考えられがちです。けれど、そこにもうひとつ加えたい要素があります。それが「気分」です。

 たとえば同じプレゼンでも、気分が良いときは言葉に勢いがあり、表情にも自然な余裕が出てきます。
相手の反応にも敏感になり、場の空気をつかみやすくなる。ところが、気分が沈んでいると、同じ内容を話してもなぜか伝わらない。これはスキルの差ではなく、気分の「流れ方」の違いなのです。
 
 私は最近、「気分のメンテナンス」も仕事の一部だと思うようになりました。気分は天気と似ていて、晴れたり曇ったりするもの。
無理に晴れを作るのではなく、「今日は曇りだな」と自覚しておくことも必要です。それだけで、感情に飲み込まれずにすむから不思議です。

 そしてもうひとつ大切なのは、気分を上げる「小さな儀式」をもつこと。メールを開く前に一杯のコーヒーを飲む。デスクの上に花を飾る。短い時間でも好きな香りを楽しむ。そんな些細な行動が、仕事モードへの切り替えスイッチになります。

 気分を整えるとは、自分のパフォーマンスを“デザインする”ことでもあります。自分が最も集中できる時間帯や環境を知り、それに合わせて一日の流れを調整していく。これは「自己管理」というより、「自分との対話」に近い感覚です。

 効率やスピードが求められる時代だからこそ、気分を軽んじずにいたい。気分は努力の敵ではなく、努力を支える土台なのです。

 一日の始まりに、自分の気分を観察してみる。「今日の私」はどんな空模様か?その小さな問いかけが、仕事の質を少しずつ変えていく気がします。

 つまりは、仕事場の環境の劣悪が、その企業の業績と比例することにつながるのではという仮説を持ちました。いい発想、顧客の笑顔をイメージすることができる仕事場の雰囲気が、お客様に伝播し良いご縁を頂くことになるのでしょう。

2025.10.14

目標とフィードバックについて

 「目標を明確に持て」というのは、ビジネスの現場では,もはや常識になっています。ところが、その“常識”が逆に人を苦しめていることも多いのではないでしょうか。なぜなら、目標はあくまで「行動を方向づけるための仮説」にすぎず、現実のビジネスは常に仮説修正の連続だからです。


 多くの人が途中で挫折するのは、目標が間違っていたからではなく、目標を絶対視してしまったからです。たとえば「年間契約件数何件」と掲げるのはわかりやすいけれど、その数字が出てきた背景が、どんな顧客と、どんな関係を築いて、どんな価値を提供するか?というストーリーが抜け落ちています。

 数字はあくまで物語の「結果指標」であって、物語そのものではございません。そこで重要になるのが、「フィードバック」です。
フィードバックとは、目標の正否を測るための学習の回路です。目標を立てた時点では、誰も正解が分からない。また、正解は一つとは限りません。

 だから、行動→結果→修正というサイクルをどれだけ短く、正確に回せるかが成果の質を決めます。如何にして、PDCAを回し続けることが出来るかに尽きます。。つまり、成功とは目標の達成ではなく、仮説修正の精度を高めるプロセスなのです。
 
 ドラッカーの言葉に、「計画とは、未来に対する現在の意思決定である」とあります。すなわち、未来は変数だらけだということです。だから、最初に決めた目標を守り抜くことよりも、フィードバックを通じて目標そのものを進化させることのほうが、実務的にははるかに合理的です。


 結局のところ、ビジネスにおける「強さ」とは、最初から正しい目標を立てる力ではなく、質の良い仮説を立てる仮説力と、それを修正していく、継続力と洞察力の巧拙という事になるのです。

2025.10.13

「売れるものを作る」不動産ビジネス

 ユニクロの柳井正会長が、日経新聞の取材で語った、「作ったものを売る商売から、売れるものを作る商売へ」という言葉は、製造業だけの話ではございません。私たちの不動産ビジネスにも、そのまま響く言葉です。


 これまで多くの業者は「できた物件をどう売るか」という発想で前線に立ってきました。間取り、立地、価格、広告。いずれも「出来上がった商品をどう売り切るか」の議論です。 でも、いま必要なのは「その物件が、誰のどんな暮らしを支えるのか」という構想から逆算して設計する発想が求められます。

 「売れるものを作る」とは、単にマーケティングを強化することではございません。生活者の価値観の変化、働き方や家族構成の多様化を読み取り、「住まい」という概念そのものを再定義することだと思うのです。
 
 たとえば、コロナ以降に増えたリモートワーク需要をどう捉えるのか。単に「書斎スペースをつけました」では不十分です。それは「作ったものを売る」発想です。むしろ「家庭と仕事の境界を柔らかくつなぐ住空間とは何か?」という問いから設計を始める。これが「売れるものを作る」につながる発想です。

 今回の柳井会長の言葉の背景には、「供給と需要をつなぐ」だけの商売から、「価値を構想する」経営へのシフトがあるように感じます。不動産もまた、単なる建物や土地を扱うビジネスではなく、「人の暮らしという時間をデザインする産業」であると捉え直すべき時がきたということだろう。そのためには、営業マンも“売り手”ではなく、“共創者”でなければなりません。

 顧客の生活観を聞き出し、潜在的な欲求を形にする。その対話力と、読解力と言語化力が、新しい付加価値を生み出します。営業マンに求められる能力は、多様化の時代になり、ますます向上していきますね。だからこそ、ここで差別化を見いだせる不動産業者が、生き残っていくことになるのでしょう。

 柳井会長の言葉の、「売れるものを作る」は、不動産会社にとっては、結局のところ「未来の暮らしを編集する企業」に変化しろ!、に尽きます。

 単に物件を売るだけではなく、「この場所で、こんな人生を描きたい」と思わせる物語を提案できるかどうかが、今後の不動産営業に求められるセンスではないかと強く感じました。

2025.10.12

トランプ大統領が平和賞を受賞できなかった理由

 毎年話題を呼ぶノーベル平和賞。今年も予想に反して、ドナルド・トランプ前大統領の名は呼ばれませんでした。中東和平に一部の実績を残したとはいえ、世界が見たのは「分断」と「衝突」でした。

 ここで問うべき視点は、トランプ氏の是非ではございません。なぜ、功績を残した人が必ずしも評価されないのかという点です。

 これは、私たちのビジネスの世界でも同じ構図がございます。短期的な成果を出したリーダーが、長期的な信頼を失うことが発生します。特に不動産、住宅業界では多く目にします。その理由は、業界の体質なのか慣習なのか、月次の契約本数を目標にして活動している企業が大半だからです。

 トランプ氏は交渉術と突破力においては卓越していました。ですが、ノーベル賞が評価するのは「結果」ではなく「理念」です。
つまり、成果の先にある世界の方向性をどう示したか、という“価値の質”が問われます。

 この違いは、経営における「効率」と「意味」の関係に似ています。
売り上げという業績を伸ばすことは重要ですが、その過程で誰を傷つけ、何を失ったかを見落としてはいけません。ノーベル委員会が平和賞を通じて問うのは、単なる行為の成否ではなく、社会にとっての持続的な意味です。

 トランプ氏が排他的な姿勢を強める一方で、平和賞は「対話」「包摂」「信頼」といった文脈を重視します。このギャップは、まさに現代社会が抱える“成功の再定義”を象徴しているとおもいます。
経済的成功と道徳的正義、効率と共感、スピードと熟考。それらは常に緊張関係にあります。

 経営者もまた、トランプ的リーダーシップに惹かれやすい。強い言葉と即断で組織を動かすスタイルは、一見、成果が出るでしょう。ですが、それが続かないのは、人の心が納得していないからです。

 平和賞がトランプ氏を選ばなかったという事実は、政治だけでなく、私たち自身の“リーダー観”を静かに問い直しているのではないでしょうか。