アキバのつぶやき

2025.10.02

ボヤキが示すマネジメントの本質

 田中将大投手が200勝を達成したニュースに接すると、楽天時代の恩師・野村克也監督の“ボヤキ”が思い起こされます。野村さんの口癖は、単なる愚痴ではなく「考えさせる問い」でした。問いを与えられた選手は、言葉の奥にある意図を読み解き、自らの頭で考えざるを得ない。その習慣が田中投手の勝負強さを鍛え上げ、長期的な成果へと結実したのです。

 これは不動産営業を率いるリーダーにとっても示唆に富みます。経営者が「売上を上げろ」「数字を達成しろ」と答えを提示するのは容易です。しかし、それでは営業現場に思考の蓄積は生まれません。短期的な成果は出ても、組織は学習しない。経営者の役割は、数字を追いかけること以上に「問いを投げること」にあるのです。

 「なぜこの地域の物件は動きが鈍いのか」「顧客が本当に求めている価値は何か」「我々が提供しているサービスは10年後にも通用するのか」。こうした問いを経営者が投げかけることで、営業マンは単なる販売員から、顧客の未来をデザインするコンサルタントへと変わっていきます。根拠のない訪問を営業マンは、してはいけません。意図をもってお客様宅へ訪問することで、お客様との信頼が構築できると思います。

 マネジメントとは、部下に答えを与えることではなく、問いを通じて考える力を引き出すことです。答えは状況が変わればすぐに陳腐化しますが、問いを立てる力は組織の持続的な資産になります。野村監督がボヤキを武器にしたように、リーダーもまた「考えざるを得ない問い」を組織に仕掛けていく必要があるのではないでしょうか。

 結局のところ、経営とは「問いの質」で決まります。田中投手の200勝が問いの積み重ねの成果であるように、不動産会社の持続的な成長も、リーダーが投げる問いの深さと豊かさにかかっているのです。

2025.09.30

AI経営者という未来像

 経営というのは、一言でいえば「意思決定の連続」です。これまでは人間の経営者がすべてを背負ってきましたが、AIが経営に踏み込む時代が見え始めています。AI経営者という発想は決してSFではなく、実際のビジネス現場から芽を出しつつあるのです。

 
 たとえば、アリババやアマゾンのような巨大EC企業では、すでにAIが価格設定や在庫配置をリアルタイムで判断しています。そこに人間の「社長の勘」は入り込む余地がほとんどありません。合理的な最適化は、AIに任せた方が確実に成果を上げる。これは経営の一部がすでにAI化されていることを示しています。

 また、米国の投資ファンドではAIを「ファンドマネージャー」として登録し、銘柄選択を任せた例もあります。AIは感情に振り回されず、膨大なデータに基づいた冷徹な判断を下す。これが「人間の弱さ」を補う役割として有効に機能しているというわけです。不動産業界でも、AI査定というものも散見されています。それは過去の膨大な成約事例を基に、はじき出してきますので、AIが得意とする仕事です。その強みは、営業に取り入れることは大事です。ただ、不動産の取引というのは、当事者である人間が決断することで成り立ちますので、双方の思いというものが大きな要素として存在します。

 ですので、ここで見落としてはいけないのは、「経営も営業は単なる数字の足し算や掛け算だけではない」という事実です。たとえばスターバックスの成長を振り返ると、単なるコーヒーの販売最適化ではなく、「第三の場所」というコンセプトを掲げたからこそ、世界中の顧客の共感を集めました。こうした物語を生み出す力は、AIにはまだ持ち得ない領域です。

 結局のところ、AI経営者の登場は人間を置き換えるものではなく、「役割の再分配」を促すものです。合理性やデータ解析はAIに委ね、人間は物語や理念を描き、社員や顧客の心を動かす。むしろAIが進化するほどに、人間の経営者にしかできない部分が浮き彫りになると思うのです。

 経営とは「答えを出すこと」以上に「問いを立てること」。AIが得意なのは答えであり、問いを生むのは人間です。AI経営者の時代にあっても、未来に意味を与える問いを立て続けるのは、やはり人間の仕事なのです。

 AIはどこまでも人間世界が進化向上する道具でしかないという事を肝に銘じ、質の高い質問を作り、気分の良い物語をつくっていきたいものです。

2025.09.29

パーマン

 AIの話題を耳にするたびに、私は藤子・F・不二雄の「パーマン」を思い出します。特に「コピーロボット」の存在です。本物のパーマンが学校や日常生活に出かけている間、コピーが机に座って代わりを務める。外見も声もそっくりで、ぱっと見には本人と区別がつきません。この仕組みは、現代の働き方におけるAIの役割と驚くほど重なります。

 いま私たちが直面しているのは、AIという「仕事のコピー機」をどう使うかという問題です。メールの仕分け、資料作成、会議の議事録作成。これまで人間が多くの時間を費やしてきた作業を、AIが短時間でこなしてくれる。

 いわばコピーロボットが机に座って宿題を片づけてくれるようなものです。そのおかげで私たちは、本当に人間にしかできない仕事に時間を振り向けられるようになる。

 ただし、ここに落とし穴があります。パーマンの物語では、コピーロボットを使いこなせずにトラブルを起こす場面がよく描かれます。コピーは万能ではなく、あくまで「代理」に過ぎません。AIも同じです。便利だからといって全面的に任せきってしまうと、判断の主体を失いかねません。

 働き方改革が叫ばれる中で、AIに頼り過ぎれば「人間不在の効率化」になってしまう危険性があるのです。
むしろ大切なのは、AIを導入することで「働く意味」を再定義することです。人間が本当に価値を発揮できるのは、他者との関係を築く場面や、未踏の問題をどう解くかを考える場面です。

 コピーにはできない、人間ならではの創造や共感。それこそがAI時代における働き方の核心になります。
AIは現代のコピーロボット。便利で頼もしいけれど、それに依存するのではなく、活用することで「人間の仕事の本丸」を浮かび上がらせる。そう考えると、働き方の未来はもっと前向きに描けるのではないでしょうか。

2025.09.28

失敗と書いて何と読む?

 「失敗と書いて、成長と読む」。この言葉は、名将・野村克也監督の名言です。ただ、私はここにちょっとイタズラを加えて「失敗と書いて、学びと読む」と置き換えてみたいのです。

 
 失敗を経験するのは、たとえるなら自転車に乗れるようになる過程に似ています。誰もが最初は転びます。膝をすりむき、泣きそうになりながらも、ペダルをこぎ続ける。その度に「次は少しバランスを取ってみよう」と小さな修正を繰り返す。ここで得られているのは「成長」ではなく、まさに「学び」そのものです。成長はその先に見える副産物に過ぎません。
 
 ビジネスでも同じですね。新規開拓の営業であったり事業が思ったように成果をあげられなかったとしましょう。普通なら「失敗」の烙印が押されます。しかし、その背後には「顧客はなぜ反応しなかったのか」「どの仮説が甘かったのか」という、改善の宝の山があります。学びを抽出しない限り、失敗はただの赤字決算ですが、学びに変換すれば、それは次への投資になります。

 面白いのは、学びは「時間軸に対して前向き」であるということです。失敗を「成長」と読むと、どうしても結果が出るまで我慢大会になってしまう。間違った努力の方向に向かう危険性があります。けれど「学び」と読むと、その瞬間にすでに収穫があります。転んだ直後に、「なるほど、ここでハンドルを切りすぎたか」とわかるように、失敗は即時にリターンをもたらしてくれるのです。
 
 野村監督の言葉を借りれば、成長は学びの累積効果。だから私は、まず「学び」と読むことを意識したいと思います。失敗は怖いものではなく、未来の行動をより良くするための情報提供者なのだと思うことで、落ち込む頻度も少なるのではないでしょうか。勇気を出して失敗を恐れず、正しい努力を継続させましょう。

 最後に、努力は裏切らないと野村監督は言い切ります。

2025.09.27

世論調査について

 企業経営において「国語による世論調査」を考えますと、これは単なる教育や文化の話にとどまりません。むしろ経営そのものの核心に触れるテーマだといえます。なぜなら、企業を動かしているのは最終的に「言葉」だからです。

 会社の理念、ビジョン、スローガン。これらはすべて言葉で表現されます。売上や利益という数値目標はもちろん大切ですが、人が腹落ちして動くのは数字そのものではありません。「私たちは何のためにこの事業をしているのか」という問いに、納得感のある言葉で答えること。そして、物語を語ることです。ここに経営の本質が宿ります。
 
 国語による世論調査は、社会の言葉の選び方や意味の変化を映し出します。例えば「挑戦」という言葉ひとつをとっても、以前はリスクをとる勇敢さの象徴でしたが、いまでは自己成長や学びの姿勢を含む柔らかなニュアンスで使われます。企業がその変化をつかめているかどうかで、社員や顧客とのコミュニケーションの質は大きく変わります。
 
 顧客アンケートや市場調査では数字ばかりを追いがちですが、その裏にある言葉を丁寧に拾うことが重要です。たとえば「便利」という声ひとつでも、スピードなのか、分かりやすさなのか、安心感なのか、意味するところは人によって違います。言葉の解像度を上げる努力なしに、真の顧客理解はありえません。
 
 つまり経営における「国語の世論調査」とは、単なる言語の流行を知ることではなく、社会がどんな言葉に共鳴し、何を拒んでいるのかを掴むことに他なりません。その洞察が、組織のビジョン設計や商品開発の方向性を決定づけると思うのです。
 
 企業経営は数値で回すものではなく、言葉で動かすもの。言葉をどう扱うかが、成果を分ける最大の経営資源だといえるでしょう。
聖書にあるように、「はじめに言葉ありき」ですね。「気」なしに言葉を発することを、慎まなければいけないと、強く思うばかりです。