アキバのつぶやき
2025.11.01
人間関係について
26年ぶりに逮捕された犯人が、被害者の夫の同級生だったというニュース。 この出来事を耳にして、私たちはまず「なぜそんなことが起こるのか」と驚く。しかし、少し視点を引いてみると、そこには「人間関係と信頼の構造」という、より普遍的なテーマが浮かび上がってきます。
殺人事件のような極端な事例でなくとも、職場や組織の中で似た構造を見かけます。長年の付き合いだから大丈夫、彼は同じ釜の飯を食った仲だから、という思い込みが、往々にして判断を鈍らせます。人間は、知っている相手ほど見ます。関係の深さが安心を生み、その安心が観察を曇らせるのです。
時間が経つほど、信頼は自然に深まるように思われがちですが、実際には「確認されない信頼」は、少しずつ劣化していく。26年という歳月の中で、被害者家族の時間は止まり、加害者の時間は進んでいきました。信頼の構造もまた、放置すれば風化する。
私たちにできるのは、時間を過信せず、関係を定期的に見直すことです。「昔から知っている」という理由ではなく、「今も見ている」「今も聞いている」という関わりの積み重ねこそが、本当の信頼を支えると思うのです。
時間は、癒しにも逃避にもなります。だからこそ、信頼を維持するには、意識的な“再接続”が必要なのではないでしょうか。
2025.10.31
検索から指示の時代へ
昔の営業マンは、とにかく情報を“探す”のが仕事でした。物件情報を検索して、相場を調べて、売主や買主に数字を示す。情報をどれだけ持っているかが「信頼」につながっていました。
けれど、今の時代は違います。AIがあっという間に相場を出してくれるし、過去の成約事例もワンクリックで一覧化できますつまり、「調べる」ことで差はつかなくなったのです。という事は、我々零細不動産業者にとってはありがたいことです。
では、営業マンの価値はどこにあるのでしょうか。それが「指示する力」なんです。
たとえば、売主から「早く売ってほしい」と頼まれたとき。昔なら「周辺の相場を調べて、少し安めに設定しましょう」と提案して終わりでした。でも今は、「どんな買主に、どんな暮らしを届けたいか」を考えるところから始まります。
AIは検索を代わりにしてくれます。だからこそ、営業マンは「考える人」になる。情報を集めるよりも、「この情報をどう使うか」を設計する。「検索する時代」では、知識量が武器でした。「指示する時代」では、構想力が武器になります。どんな家をどんな人に勧めたいのか。どんな暮らしを描いてもらいたいのか。その絵を描ける営業マンが、AI時代に最も信頼される人になるのではないでしょうか。
私たちはいま、検索の先に立っている。“調べる営業”から、“導く営業”へ。この変化を恐れるのではなく、楽しむ。
2025.10.28
不動産営業のリアリズム
「ラプラスの悪魔」という概念があります。
しかし、現実はまるで違います。
金利が動けば買い手の心理が変わり、ひとつの事故物件報道で地域の印象が揺らぐ。SNSの口コミひとつで街の価値が変わることさえある。まさに“不確実性”が前提の世界です。
だからこそ、営業の本質は「コントロールできること」と「できないこと」を見極める力にあります。
楠木建さんは、よく「ストーリーとしての競争戦略」という著書の中で次のようなことを言っています。
ラプラスの悪魔のように未来を読み切ることはできません。
市場を読むより、人を読む。未来を当てるより、信頼を積む。それが、不確実な時代を生きる不動産営業マンのリアリズムではないでしょうか。
2025.10.27
ヒッチハイクで目的地にいち早くたどり着くには?
過去に、ある企業の面接試験で、こんな質問が出たといいます。
多くの営業マンなら、「大きなボードを掲げる」「身なりを整える」「笑顔を絶やさない」など、目立つ・感じのいいアプローチを思いつくでしょう。しかし、それは“どうやって止まってもらうか”という方法論の話にすぎません。
ところが、次のように答えたとしたらどうでしょう。「目的地に向かう車を選びます」。
不動産営業でもまったく同じだと思います。
限られた時間とエネルギーを、”行き先の合う顧客(=目的地の同じ車)”に集中させること。これが、成果を早く出すための、本当の近道だと思うのです。それこそが、見えない力のひとつである、”洞察力”が大切になります。
「ヒッチハイクで早く着く方法」を「どう立つか」「どうアピールするか」と考える人は多い。ですが、優れた営業は、「どの車が正しいか」を先に見抜く。
そして、その車が見つかれば、どうすれば同乗させてもらえるかという戦術に移ります。それには、まず何をおいても、「私は善良な人間です、安心してください」という信頼構築が、一丁目一番地の戦術です。
さらに言えば、目的地の定義を間違えてはいけません。
“売ること”が目的になってしまえば、短期的には数字が立ちますが、信頼という長距離は走れません。“お客様の人生にとってベストな住まいを導くこと”が目的であるなら、車の選び方も変わってきます。
ヒッチハイクも不動産ビジネスも、結局は「どの方向に、誰と走るか」がポイントとなります。
営業の本質としては、足を速く多く動かすことではなく、正しい車に乗る洞察力・判断力にあるのではないかと最近強く感じます。
2025.10.26
青の季節に立つ、高市新首相と霜降の思考
少し前の23日は、二十四節気の「霜降(そうこう)」。秋がいよいよ深まり、夜明けの大地に霜が降り始める頃を指すとあります。気温の低下とともに空気が澄み、景色の輪郭がくっきりと浮かび上がる時期です。昔の人はこの現象を「青女(せいじょ)」。冷気を司る女神の仕業と呼んだそうです。自然界の「青」が最も冴え渡るこの時節に、日本の政治にもまた一人の「青」が立ちました。
そうです、高市新首相です。日本の憲政初の女性首相です。
政治の世界はしばしば「熱」でものが動きます。声の大きい者が注目を集め、感情が波のように世論を動かすように。
高市首相がこの「霜降」の時期に青をまとうのは、偶然ではない気がしてなりません。政治的な駆け引きの熱気が渦巻く中でも、あえて冷静さを保つ姿勢。それは、情勢を凍らせる冷たさではなく、余分な熱を取り除き、物事の本質を際立たせる冷たさです。霜が朝日に溶けるとき、そこに新しい季節の兆しが見えるように。
お許しを頂き、不動産ビジネスに置き換えるなら、この“青の思考”は経営にも通じます。短期の売上に一喜一憂する「熱」の経営ではなく、環境の変化を冷静に見通し、地域の未来を描く「冷」の経営。「青女」がもたらす冷気のように、余分な感情や焦燥を取り除くことで、次の芽が静かに育ちはじめる。
霜降の朝、青の勝負服に身を包む首相の姿は、「冷たく、そして強く、まっすぐに生きる」ことの象徴に見えます。青は、決して冷酷ではない。むしろ、未来に誠実であろうとする意志の色なのです。
だからわたくしも、紺のスーツに紺のネクタイという青色スタイルを第一として、お客様とご面談していきます。